SSブログ

ナル麻衣小話 [小話]

すごーく久しぶりの短編です。
節電いちゃらぶ話し。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



     1 


 ナルが、逃走した。
 俺様ナル様な天才博士様も、今年の日本の暑さには、挑む気にもならなかったらしく、七月半ばに入った途端、一時帰国した。今年は暑くなるとあちこちで予報されていたので、麻衣は勿論、他の面々も、納得して、驚きもしなかった。
 表向きは、本部に無理矢理呼び出された為となってはいたが、残念ながら、誰も信じていなかった。
 よって、ただいま、ナルのマンションは蒸し風呂と化していた。
 だが、そんな蒸し風呂に、奇特にも、足を踏み入れる者が居た。
「‥‥‥あつーいっっっ!」
 ナルが慌ただしく帰国して三日後、麻衣は、ナルのマンションを訪れた。
 事後承諾で置き去りにした薄情な恋人の為、冷蔵庫の中身の始末と、空気の入れ換えと、簡単な掃除をする為である。
「‥‥‥あついにもほどがーっっっ!」
 叫びつつ、麻衣は、換気扇を付けた。
 窓も開ける。だが、断固として、エアコンは付けなかった。
 どうせ掃除をして汗を掻くし、と。
 しかし、勿論、麻衣だとて、多少でも快適にしたいので、お掃除ルックに着替えた。
 簡単に言えば、タンクトップとハーフパンツ万歳である。
「よし、準備完了! 頑張るぞ!」
 用意のいい麻衣は、お掃除完了後のお楽しみスイーツも冷凍庫に入れてから、掃除機を手にした。
 そして、面倒なことはとっとと終わらせてしまうべく、さくさくと作業を開始して、手際よく、1時間ほどで、終了した。 
「‥‥‥終わった。完璧! えらい、私!」
 綺麗なマンションを綺麗に保ったことを、麻衣は、自画自賛した。
 そして、そそくさと、シャワーを浴びて、お楽しみタイムに突入した。
 つまりは‥‥‥。
 節電温度でゆるーくエアコンを掛けて、タオルケットと、アイスと、枕を常備して、広々綺麗なリビングのふかふかソファで、ゆったりお昼寝タイムを楽しむことにしたのである。
 それは、どうせなら家主が居ない時にしかできないことをしてやろう、という、置き去りに対する前向き対策でもあった。
 恐らく、麻衣のそれを、仲間たちが知ったら、なんて慎ましい、と、涙ぐんだことであろう。
 出来たて一ヶ月未満の恋人を、事後承諾で置き去りにした男への対策がそれでは、あまりにも、あんまりだ、と。そして、もしかしたら、あの馬鹿は見捨てた方がいい、と、博士様の逆鱗に触れるようなことをアドバイスしたりしたかもしれなかった。だが、博士様と仲間たちにとっては幸いなことに、そこには、麻衣以外の誰も居なかった。かくして、
「‥‥‥はふー、ごくらくー」
 麻衣は、ご褒美高級アイスを楽しみつつ、ふかふかソファでごろごろして、綺麗なマンションでのお留守番タイムを満喫し‥‥‥きもちよーくお昼寝に突入したのである。


     ※


 真夏間近、ナルは、非常に不本意な帰国を強いられた。
 蒸し暑い日本の夏を避けられたことは良かったが、それ以外には、何一つ利益のない、良いことのない帰国だった。はっきり言えば、ナルは、帰国などしたくなかった。
 だが、非常に重要な案件があると、ごりごりごりごりごり押しされて、帰国させられた。
 そして、帰国した途端、ナルは、切れた。
 ごく簡単に纏めると、ナルは騙されたのである。
 非常に重要な案件というのは、嘘で、呼び出したのは、ただ単に、ナルにご執心な有力者の娘と顔を合わせる為、つまりは見合いの為だったのだ。
 一月前、鈍いにも程がある天然お馬鹿娘を、ようやく、恋人にしたばかりのナルにとっては‥‥‥それは、特大級の地雷だった。
 これからぎっちりといろいろと教え込んでやろうと思っていた恋人を置き去りにしたことは、ナルにとっては、非常に不本意だった。夏に怪奇現象シーズンを迎える日本を離れることも、かなり、不本意だった。ダブル地雷に、流石のまどかも、巻き添えを食らったリンも、発覚した途端、青ざめた程、それは、本当に、本当に‥‥‥愚かな行為だった。
 よって、笑顔を浮かべたまま切れたナルは‥‥‥。
 ブリザードを吹かせつつ、かろうじて儀礼的な挨拶をした後、地雷を踏み抜いた上層部を脅しまくって‥‥‥。


 とんぼ返りで日本に戻ったナルは、どうしてか、リビングに足を踏み入れた途端、足を止めた。
 そして、立ち尽くした。
「‥‥‥ナル、どうかしまし‥‥‥っっっ!」
 ナルの後ろからリビングに入ったリンは、どうしたのかと聞こうとした。
 だが、途端、がつっ、と、緩やかなエアコンの掛かったマンション内で、痛そうな音が響いて、リンの言葉は遮られた。ごく端的に説明すれば、ナルの持っていった小型のアタッシュケース(ノートパソコン入り)が、リンの顔に直撃した為であった。酷い話しであった。乱暴的な話しであった。
「‥‥‥リン、悪い。馬鹿が、油断して、馬鹿な格好で寝てる」
「‥‥‥‥‥‥分かりました。そういうことなら、仕方有りません」
 さすがに、なにをするのか、と、かなり本気で怒り掛けたリンであったが、ある意味、潔いナルの謝罪を、あっさりと受け入れた。そして、なにも見ないように、後ろを向き、では、と、さっさと退避した。勿論、余分なことは、一言も言わなかった。
 なぜなら、リンは、知っていたからである。
--------現在、ナルの機嫌が最高に悪いことを。
 それと、
--------ナルの独占欲が、彼女に対してだけは、以前のナルからは、想像も出来ないほどに、激しいことを。
 つまり、余計な口出しをすると、馬に蹴られると分かっていたからである。


     ※


 程良く涼しい心地よさを満喫していた麻衣は、肌寒さで目を覚ました。
(‥‥‥ううう、なんか、寒い?)
 あれー、と、思いつつ、のそのそ起きた麻衣は、冷え切った室内に気付いて、驚いた。
 健康温度節約温度を無視しまくった極寒地帯が出来上がっていた。
 麻衣は、はわはわしつつ、リモコンを探した。
 だが、確かに、テーブルの上に置いたはずのリモコンは、どこをどう探しても、無かった。
「‥‥‥な、なぜ?」
「なんだ。起きたのか」
 戸惑う麻衣は、かちゃり、と、ドアが開く音と、聞き慣れた声を聞いた。
「へ?」
 麻衣が振り返ると、浴室から、白いバスローブを羽織ったナルが出てくる所だった。
「‥‥‥あれ?」
「そのまま寝ていれば良かったのに」
 なんというか、甘さの欠片もない声で、そんなことを言われて、麻衣は、反射的に謝りそうになった。まるで起きたことが悪いことのような言い方であった。むしろ、なんで寝ていないんだ、という感じだった。
「‥‥‥え、えと‥‥‥寒かったから‥‥‥」
「まあ、いい」
 許して貰うようなことはなにもないのですが、という言葉を、麻衣は、ぐっと堪えた。
 ナルの機嫌が、かなーり悪いと気付いたので、ぐぐっと。
「‥‥‥んーと、それより、ナル、本物だよね?」
「当たり前だ」
「なんで居るの? まだ、夏だよ? 蒸し暑いよ?」
「‥‥‥」
「当分、暑いよ?」
「どういう意味だ」
「え? だって、ナル、日本の蒸し暑さが嫌で帰国したんでしょ?」
 待って、と、そこに、事情を知っているまどかやリンが居たら、必死に止めただろう。それ危ないから、地雷だから、と。だが、残念ながら、二人は居ない。
「‥‥‥そんな理由で帰国なんかするか」
「そうなの? ふーん。じゃあ、なんで?」
「‥‥‥」
 それは、地雷だった。特大の地雷だった。
 だが、やはり、残念ながら、事情を知る者は居ない。
 よって、ナルのご機嫌は、実は、ちょっと良くなっていたのに、地の底を突き抜けた。
「‥‥‥それよりも、おまえは、なにをしているんだ」
「は?」
「こんな所でそんな格好でなにをしていたんだ」
「‥‥‥ええ? 掃除のご褒美のお昼寝? なんか駄目だった?」
「駄目に決まっているだろう。寝るなら寝室に行け。その前に、その格好をなんとかしろ」
 ええええ、と、麻衣は、自らの衣服を見下ろした。
 最近お気に入りの、ガーゼを使用したタンクトップと、ハーフパンツは、爽やかな青色で、可愛くて、涼しくて、なにも問題はなかった。少なくとも、麻衣の目から見れば、普通である。責められる要素は欠片もない。
「ここはリビングだ。来客があるかもしれない所で、そんな格好はするな」
「‥‥‥」
 うわ、面倒なこと言い出したよ、と、麻衣は思った。
 けれど、あまり驚きは無かった。
 昔から、実は、ナルは、ちょっとだけそういう所があった。
 礼儀にうるさいというか、堅物というか。動きやすいからと調査にハーフパンツを履いていったら、怪我をするとか危ないとかで、いろいろと言われたこともある。その時は、心配してくれているのだと納得したのだが、いまは‥‥‥。
(‥‥‥面倒な人だなぁぁぁ)
 と、思うだけである。
 だが、素直な麻衣の場合、心中で思うだけではなく、顔にも出ていた。
 よって、ナルの眉は、ぴくり、と、動いた。
「‥‥‥なにか反論がありそうだな」
「‥‥‥えと、ほら、来客なんて無いし。お客さんが来たら、流石に、着替えるから‥‥‥いいかなーと」
「寝ていては意味が無いだろう。実際、リンが見るところだった」
「リンさんなら、別に、問題無いと思う」
 面倒と思いつつ、麻衣は、返答していた。
 なんでこんなことで揉めるかな、と。
 だが、
「問題無い、だと?」
 重低音で聞き返されて、流石に、やばい、と、気付いた。
 なにがどうなっているのかは分からないが、この話題は、ナルにとっては、物凄く重要だったのだと、やっと、気が付いた。
「‥‥‥え‥‥‥えと」
「分かった。教えてやろう。なにが、どう、問題なのか」
 麻衣は、やばいかもー、と、あわあわと逃げようとした。
 だが、もはや、今更だった。
「きっちりとな」
  

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

シリアスばかり書いていると、らぶらぶが書きたくなるので‥‥‥。
ざらーっと書いてみました。勢いで。
続きもあるので、そっちは、修羅場終わったら、裏別館に、アップしようかと。

はー、すっきりしたので、また、頑張って来ます。
あと通販は荷造り全部終わりました。
7/18分まで届いたのは、すべて。
‥‥‥台風で横殴りなので、台風過ぎ去ったら、駆け込みます。
‥‥‥早く過ぎ去って欲しい‥‥‥。
‥‥‥なんの罰ゲーム‥‥‥。

あと少しあと少しあと少し‥‥‥。(呪文)
終わったら、ポケモン映画行くんだ!(‥‥‥)

あ、誤字脱字は見逃してやってくださいーっっっ!
見直してないですー。(こら)














この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。